スペイン語の大きな特徴の一つに、特定の母音の上に付けられる鋭アクセント記号(´:ティルデ=tilde)があります。
英語のように単語ごとにアクセントの位置を力づくで暗記する必要がないのは、このアクセント記号のおかげです。スペイン語では、「記号が付いている位置を、とにかく強く高く発音する」という絶対的なルールがあるため、初見の単語でも記号さえあれば確実に正しく発音できます。
アクセント記号には、大きく分けて以下の3つの重要な役割があります。
① 本来の規則から外れた位置を強調する(強勢の明示)
スペイン語には、アクセント記号がない場合に「どこを強く読むか」を定めた自動的な規則(※1.7で詳述)があります。その規則に当てはまらないイレギュラーな位置を強く読ませたいときに、この記号を明示的に打ちます。
- música(音楽) → 規則通りだと si が強くなりますが、ú に記号があるため「ムシカ」と発音します。
- café(コーヒー) → 規則通りだと ca が強くなりますが、é に記号があるため「カフェ」と発音します。
② 同音異義語を区別する(識別的アクセント)
スペルも発音も全く同じ(あるいはほぼ同じ)単語について、文脈上の意味や品詞を区別するためだけにアクセント記号が使われることがあります。これらは耳で聞くときの発音の強さは同じですが、視覚的に完全に区別されます。
| 記号なし(主にアクセントが弱い) | 意味 | 記号あり(主にアクセントが強い) | 意味 |
| el | 定冠詞(ザ) | él | 人称代名詞(彼) |
| tu | 所有格(君の) | tú | 主格代名詞(君は) |
| mi | 所有格(私の) | mí | 前置詞格(私を/に) |
| si | 接続詞(もし〜なら) | sí | 副詞(はい/そうだ) |
| se | 再帰代名詞(自身を) | sé | 動詞 saber の現在形(私は知っている) |
| mas | 接続詞(しかし)※文語 | más | 副詞(もっと、より多く) |
③ 疑問詞であることを示す
第2章などで詳しく学ぶ que や cuando などの単語は、疑問文や感嘆文の中で使われるとき(疑問詞・感嘆詞)に必ずアクセント記号が付きます。関係代名詞や接続詞として使われるとき(記号なし)との識別用です。
- ¿Qué es esto?(これは何ですか?) / El libro que compré(私が買った本)
- ¿Dónde vives?(どこに住んでいますか?) / La casa donde vivo(私が住んでいる家)
⚠️ アクセント記号に関する重要なルール
- 記号が付くのは「母音(a, e, i, o, u)」の上だけ子音の上にこの形の記号が付くことは絶対にありません(
Ñの波線はアクセント記号ではなく、文字の一部です)。 - 大文字にもアクセント記号は維持されるスペイン語アカデミー(RAE)の正式な規則では、大文字であってもアクセント記号を省略してはならないと定められています(例:África, Él)。